top of page

Day_5_1 欠如は借りパク


 『夢判断』『精神分析入門』『ユング』……

 いや、こういう真面目な本じゃない。もっとスピリチュアルな馬鹿が読みそうなやつを──

 

 俺は赤井と共に、市営図書館へ来ていた。

 夢で見たあのメモは何かの書籍の断片のようだった。こうして夢に関連する書籍を探せば、もしかしたら元の本を見つけられるかもしれない。

 

 こうして関連ありそうなジャンルの本棚を見に来たまでは良かったものの、こうして大量の背表紙を見てみると……

 ああ、これを総当たりするのは流石に無理だな。

 

「えーっと、夢占いによると殺される夢は……生まれ変わり、欠点の克服……」

「……狼の夢は?」

「狼は危険や凶暴性を示す、狼になる夢を見たときは自身の行動を戒めよ──だってさ」

「はぁ」

 

 赤井は夢占いの本を読んでいる。二つの意味で薄っぺらい本だ。

 『本書P240を参照』……か。あれによれば、あの紙切れの原本はそこまで薄い本という訳ではないだろう。

 

 そう思いながら本棚を見ると、オカルト本の並べられたエリアにひとつだけ、中くらいの隙間があることに気がついた。

 あの空白には何の本があったのだろうか……

 そうだ。蔵書検索機能を使えば何なのか分かるのでは?

 同ジャンルの本を検索し、五十音順に並べて見当をつけ、そこから貸出中のものを探せば良い。

 俺はスマホを取り出し、この図書館のホームページを開いた。

 

~~~~~~

 

「ビンゴだ」

「えっ?」

「あの空白にある本の題名が分かった」

 

 赤井は俺のスマホを覗き込んだ。

 

 あの位置にあったはずの、貸出中の本の記録。

 題は『夢の魔術〜深層意識の操作、明晰夢、および境界に関する魔術〜』。

 それ以外の情報は──ない。著者名も出版日も記載がない。どういうことだ。

 

 深層意識……あの紙にあったキーワードだ。どうにも怪しい。

 もしこれがあの紙切れの本でなくとも、読めばあの夢に関する有益な情報を得られそうな気がする。

 

「返却予定日は……明日か。」

 

 ひとまず、この本の貸し出し予約をしておこうか。これで確実に借りられるはずだ。

 今借りているやつが延滞しなければ、だが。

bottom of page