Day_1_2 Now, it's a show time.
すんでのところで包丁を躱した男に、溢れる感情を投げつける。
「どうしてどうしてどうして!! アンタさえいなければ!! お母さんは!!」
私は何を言っているんだろう。
お母さんを殺した奴は、もうこの世にはいないはずなのに。
「お母さんを返せ!! 返せぇぇぇぇっっ!!」
止めようとしても止まらない体。もう一度、その男の首筋めがけて包丁を突きたてる。
「っ……! なん、なんだよお前はっ!」
のけぞり躱した男の人が聞く。そんなの私が聞きたいよ。私はどうしてこんなことしてるの? どうしてこんな気持ちになるの?
さっきの変な声のせいなのかな、でもそんなことってあり得るの? 声だけでこんなになるなんて。
夢だから何があってもおかしくはないけど……
夢?
夢か。
じゃあ殺しても本当の人殺しではないし。別にいいか。
「逃げないでよ! お母さんを殺しておいて、責任取らないで逃げるなんて、この卑怯者!!」
「おい、落ち着けってお前! 何言ってるかさっぱり分かんねぇよ!」
本当に、何言ってるんだろうね。
「だーーもう、お前! いい加減ニ、シィィィ……」
男の人は怒って、叫ぶために大きく息を吸い込んで──
「ウオオオォォォォォ──────」
その叫びは、遠吠えの音がした。
「──え?」
男の人は、男の人だったものは、気がつくと
巨大な狼になっていた。
「なに、これ──キャッ!?」
その前脚で手を振り払われ、私は包丁を取り落としてしまった。
すかさず屈んで拾おうとしたら、狼は私の片脚を咥えてつまみ上げ──
「嫌、離し、あぁぁッ!?」
そして、振り回して
振り回
ふられ?
ふ
──ぁ、
ぶつか──
「────ッウぁ……、ぁ……」
息ができないっ……地面に叩きつけられたんだ
骨も折れてる気がする、さっきそんな音が、
骨、
え?
「あっ、あ"ーーーーッ!? ああ"ーーーー、あ"ーーーーーー」
痛い痛い痛い痛いいたいィッ!?
脚、あしが、なんでこんなに痛いの!?
これは夢じゃないの!?
夢じゃないの? 夢じゃないなら──
私は、死ぬの?
「ガルルルルルルルルル…………」
狼が唸る、来ないで、こっちに来ないでよ
嫌だ死にたくない私はまだ
「ぃ…………ぁ」
首を噛むな、噛まないで、やめてください
ちぎれるから
ちぎれ
あ。