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Day_6_1 幸運過多症

 俺は商店街に来ていた。

 

「うお、一本当たりぃ!」「すげー」

 

 アイスの棒を持って小学生が騒いでいる。

 道行く人は……何故か、皆楽しげに見える。

 

「聞いてよ今日ね、いつもは売り切れて買えないケーキを運良く──」

「っしゃあ! SSR来た来たァ!」

「今日のテストクソ簡単で良かったー単位かかってたんだよ」

 

 活気がいい。

 いや、活気が良すぎて気持ち悪い。

 ……いや、そんなことはいい。俺は早く、クリーニング屋に行かねばならない。

 

 朝起きたら服と布団にべっとりと付いていた、あの血のシミを消さねばならないのだ。

 

 ああクソ、まだ口の中に血の味が残ってやがる……よくすすいだのに。吐く水が赤くなくなるまで。

 一体俺に……俺達に何が起きているんだ。

 どう見ても俺の体に傷など無い。あの血は俺が流したんじゃない。

 

 どこから湧いて出たんだ。まさか……夢、か?

 

~~~~~~

 

 帰り道。俺はなんとなく雑貨屋に立ち寄った。

 雰囲気が好きで、ここにはたまに来るのだ。

 

 立ち並ぶ服を見ていると、チャラ男のアルバイト店員がこちらに近寄ってきた。

 何だよ話しかけんな一人でゆっくり選ばせろ──

 

 しかし、店員の口から出たのはセールストークなどではなかった。

 

「聞いてくださいよお客さん。お客さんもあの夢、見ました?」

「夢……」

「今日来たお客さんも店長もみんな言うんですよ、『殺し合う夢を見た』って」

 

 やはり、か。昨夜の夢に見えた群衆はこの街の人だったのだ。

 

「やっぱ見たんすよね?」

「ああ」

「なんだかブキミっすねー。そうだ、ブキミなことが起こったときはこういうお守りが良いんですよー!」

 

 チッ、なんだよやっぱりセールストークかよ……。

 

「これとか、あパワーストーン系も良いんじゃないっすか? 水晶はパワーストーンの代表格で凄く人気なんすよ、この前も水晶系の石ばっかり買い占めてったお客さんが──」

 

 水晶。

 水晶……

 水晶を買い占めた、だと!?

 

「な──、なんだそれ、詳しく教えてくれ!」

 

「おっ食いつき良いっすねお客さん! 水晶はですねパワーストーンの中でも浄化力と全体運が──」

「……そっちじゃねえ!」

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